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憂鬱なヴィランズ (カミツキレイニー)

憂鬱なヴィランズ (ガガガ文庫)憂鬱なヴィランズ (ガガガ文庫)
(2012/08/21)
カミツキレイニー

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揺籃期の終わり

 笠木兼亮の友人である煮雪瞑が、二人きりで暮らす妹で女子中学生の煮雪日和を残し姿を消してから一週間と五日が過ぎた。そんな現実から目をそらすように、通学途中のバスの中で他愛もない会話をしていた兼亮と日和は、危なげな男子高校生に絡まれる。その少年、村瀬一郎は、瞑に対して散々な悪態をつくと、彼らが「絵本」を持っていないかと尋ねてきた。
 何のことやら分からず呆然とする二人を引き離し、日和を人質にした村瀬は、日和の口を指でこじ開けて手を突っ込むと、そこから取り出した拳銃を兼亮に向けてぶっ放す。

 にわかにバスジャックの様相を呈してきた車内にいた女子高生の一人、生駒千鳥は、兼亮にスマホのイヤホンを差し出し、耳にはめる様に言ってきた。そのイヤホンから聞こえる声に従った彼の前に現れたのは、電話先の少女、蒼い目の女子高生である帯刀月夜だった。
 彼女に助けられた兼亮は、瞑が「絵本」の悪役【ヴィランズ】に魅せられ、その悪役の能力を利用して女子中学生誘拐事件を起こしている可能性が高いと告げる。友人を助けるため、彼女から情報を引き出すことにした兼亮は、彼女と行動を共にすることにした。

 人間を特殊な形でしか認識できない少女と、少年時代に助けられた記憶から友人をヒーローとして神聖化してしまっていた後悔を抱えることになる少年が、読者にリスクある能力を与える十六冊の絵本、ワーストエンド・シリーズにまつわる事件に関わる物語だ。表に出される芝居じみた変態性と、少年期ゆえに許されるある種の傲慢さ、そしてそれらの発露として破滅的な結末を与える絵本に振り回される人々の姿を描いている。
 一度割り切れば二度と戻れない。割り切るのは敗北であるように感じる。そんな葛藤の中にある少年期の心の揺れと、そんな心の揺らぎすら超越せざるを得ない“呪い”を受けている少女の交流の中に何が生み出されるのか。それがこれからの物語になりそうだ。あえて一つ言うならば、そもそも初めになぜ煮雪瞑が絵本を手に取ることになったのか、その動機が、今後の物語構成に深く関わっていると良い感じがする。




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