大統領任命の政治学 政治任用の実態と行政への影響(著:デイヴィッド・ルイス/監訳:稲継裕昭/訳:浅尾久美子)

政治任用問題の一般化への試み

 本書では、米国の官僚組織に対する政治任用に関して2つの問いを設定している。1つは、組織によって政治任用の多寡があるのはなぜか、であり、もう一つは、政治任用は組織のパフォーマンスにどのような影響を与えるか、である。

 民主党政権に交代する直前まではよく取り上げられていたので周知のことかも知れないが、政治任用とは、官僚組織の管理職に、組織生え抜きの公務員ではなく、政治家が推薦した人材を主に外部から任命することを指す。これにより、官僚組織内部に政治的影響力を浸透させるのが目的だ。
 米国ではこの政治任用が盛んに行われており、大統領交代の際には官僚組織のトップがごっそりと入れ替わるらしい。1、2章では、この政治任用の歴史と、人事的にどのようなパターンで前政権に近い人物を排除するのか、などが書かれている。

 しかしこの政治任用、全ての組織に対して一様に行われているわけではないらしい。とある組織には多くの政治任用がなされているかと思えば、別の組織では全くいないということもある。
 これは、大統領や議会と対立する組織に対しては政治任用を増やして影響力を増す、政治的に価値はないけれど論功行賞としてポストを与える、専門性が高い組織(NASAなど)では職業公務員に任す、など、で説明できるらしい。3〜5章では、この辺りの議論が計量分析に基づいて行われている。

 感覚的に言うと、政治任用には選挙の功績に報いるという側面もあるから、政治任用が増えれば素人がトップについたりして、組織のパフォーマンスが落ちる気がする。でも、役所仕事という言葉がある様に、完全に職業公務員に任せると、サービスが低下する気もする。この辺りについて議論しているのが6、7章だ。
 ここでは、政治任用が増えるとパフォーマンスが低下する傾向がある、という結論が、官僚組織に対する事業評価格付け指標と連邦職員意識調査の回帰分析から得られるのだが、この結論に至る分析結果の解釈には疑問が残る。事業評価格付け指標の回帰分析では、決定係数が0.09であるにも拘らず政治任用とパフォーマンスには負の相関があると結論しているし、連邦職員意識調査に至っては、職業公務員が政治任用を否定的に見るのは当たり前なのだから、そういう結論に至るのは当然である気がする。

 では、この結論を完全に否定するかというと、そういうわけでもない。事実として、素人をトップにつける事で、ひどいパフォーマンスの低下を示した事例があることは間違いない。おそらくは、分析するモデルを単純化しすぎてしまっているのではないか。
 定性的に見た場合、政治的価値が高いポストには適材適所で任命するが、低いポストには選挙で功績があった人間を任命する、という傾向がある。他にもおそらく、単純に統計的に扱ったのでは取りこぼしてしまう要素が多くあるだろう。素人考えだが、単純化した統計モデルに頼るだけではなく、この様な複雑な要素も考慮した上で結論しなければいけない問題なのだろう。ただ、本書が、そこに至るまでの第一歩であることは間違いない。

 あとは日本の研究者が、日本の官僚組織にはどの様な政治任用の形態が適切か、を提言してくれれば良いのだが…。

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バクマン。 (5)(作:大場つぐみ/画:小畑健)

苦しんでも苦しんでも何故か連載を目指す

 服部哲から港浦へ担当が変わり、初連載への不安と共に、担当編集の言動一つ一つに揺れ動く真城と高木の二人。何とか連載までこぎつけたものの、アンケート結果はいまいち伸びず、それにも拘らず余裕をかます港浦への不信感は増していく。
 その頃、福田組の一角、中井は、蒼樹紅との連載に向けて、命がけのアタックを試みていた。

 漫画家サイドの不安感と、編集部サイドでの右往左往。アンケート結果という明らかな数字となって人気は現れるけれど、どうすればアンケート結果が良くなるのかは誰にもわからない。そんな中で何を求めてマンガを描くのか。亜城木、平丸、中井、いろんなタイプの漫画家が、思い込んだらまっしぐら突き抜けていくとともに、揺れる新人編集の迷走も続きます。

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PSYREN (8)(作:岩代俊明)

揺れる振り子の平衡点

 シャイナとドルキの襲撃で壊滅状態に陥ったアゲハたちの前に現れたのは懐かしい人々だった。彼らのおかげで何とか危機を切り抜けたアゲハと雨宮は、彼らの口からリバースデイに起こった出来事を知る。その時、世界に何が起きたのか?
 現代での行動が未来を変え、未来の出来事が現代に影響を及ぼす。何も変えられなかったというアゲハの後悔の念が、希望の兆しに変わるとき。現代と未来から、少しずつ変化の瞬間に迫っていく。

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バーテンダー (15)(作:城アラキ/画:長友健篩)

政治家の執念深さと禅僧の話

 見習いバーテンダーがウロウロしているうちに、師匠の過去を知るというお話。でも、一話一話を引っ張りすぎて間延びし、話のキレが薄れてきている気がする。あんまりのんびり展開になると、グラスの絵の線のシャープさとのギャップを感じるようになってしまう。
 それに、酒の話よりも人情話に重点が置かれるてくるならば、バーテンダーというこの作品と、他の人情話作品との差別化が図れなくなってしまう気がするのだが…どうでしょう?

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王様の仕立て屋 サルト・フィニート (24)(作:大河原遁/原案協力・監修:片瀬平太)

敵愾心から向上心への変換

 ジラソーレのブランドとしての価値を確立する分岐点という事で、まるごとジラソーレのお話。幹部十二人が揃い踏みです。だから悠は今日も裏方さん。
 個人的に興味深いのは、古美術商が掘り出し物の骨董品を売るためにコートを仕立てるお話。良い品だと認めさせるには、扱っている人間を信用させること。身だしなみはそれを計る一つのツール。悠の言い分も理解できるけれど、自分はファッションに興味がない方なので、着られればいいじゃん的な客の言い分はもっと理解できる。でも、そうじゃない世界に住んでいる人々が上客なんだから、そういう身だしなみのお約束に従うのも必要なのかなぁと思ったり思わなかったりの一話。

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とある魔術の禁書目録 SS (2)(著:鎌池和馬)

数珠つなぎの短編集

 平均すると1話10ページ程度の短編集。この分量から見て分かるように、1話1話それ自体に盛り上がりがあるわけではない。上条当麻の知らないところで起きていた、エピソードをいくつかの軸で連ねたものといった感じらしい。
 この軸のうち、明示されているのは「原石」というもの。学園都市で育成されている、人為的に作られた能力者ではなく、自然発生した能力者が原石と呼ばれるらしい。学園都市に対抗すべく繰り広げられる大国の策動と、それに対するカウンター、という感じでまとまっている。
 あと特徴的なのは、御坂パパママとか上条パパママとかが出てくるところ。子供たちが何かやっているだけでなく、親たちも何か関わりがありそうですね〜。

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ぐらシャチ(著:中村恵里加)

警戒しながら読まないと辛い

 高校入学前の春休み。秋津島榛奈は近くの浜辺にオカリナの練習をしに行き、ウクレレを持った少年、黒田剛典に出会う。さわやかな外見ながら、それに似合わないマイナーな楽器を持った彼に共感を抱いた彼女は、同じ高校に進学すると知り、高校での再会を楽しみにしていた。
 それから2週間ほどたったある日、オカリナの練習に来た榛奈は、高波にのまれてしまう。あわやの所で彼女を助けたのは、額に青い宝石をつけた、英語をしゃべるシャチだった。次の日は日本語をしゃべるようになっていたシャチに請われて、グラボラスという名前をつけた榛奈だったが、それが混乱と恐怖の始まりだった。

 さわやかにはじまりながら、バッサリと切る様に落とす展開。共通体験をほとんど持たない生物同士のコンタクトであるから、猜疑と不信は当然の様にあるはずなんだけれど、主人公である榛奈が警戒心の低い人格なので、それに合わせて読んでいると、かなりクるものがある。
 途中までじっくりと話を積み上げておいて、最後はパタパタと折りたたんでしまった感があるので、終わり方はさわやかに見えるんだけれど、取りこぼしてそのままの問題は結構大きいんじゃないかと思う。

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アスラクライン (13) さくらさくら(著:三雲岳斗)

1巻に戻ったみたいな印象を受ける

 読み終わって最初の感想は、これで完結なんだっけ?それともまだ続くの?という、不思議な感覚。短編とか後日談はあるらしいけれど、一応完結したらしい。本当にクライン・ボトルみたいな終わり方だった。以前にチョロっと登場したキャラが、結構重要な役回りだったことも分かったし。
 一巡目の世界から二巡目の世界に戻ってきてからは一気に休む間もない展開、なんだけれど、世界に非在化を脇に置いておいてクリスマス・パーティの劇に打ち込んだり、かがやき(火玄)塔貴也の儀式を邪魔するのに樋口のキャラクターが役立ったり、最後までシリアスとコミカルが詰め込まれた作品だった。上手く調和していたかは判断の分かれるところだけれど。
 今後の続き方によるけれど、ギトギトドロドロの動機で世界を巻き込んだにしては、意外にあっさりと幕が引かれたなあ、という感じでした。

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新政権について考える

 アメリカでは新政権発足後100日間は批判を控えるという、ハネムーン期間なるものがあるらしい。それに習って民主党政権についてもあまり論評しない様にしてきたのだが、もういいだろう。懐かしき用語だが、成田離婚の危機である。

 今回の政権交代で最も強く感じたのは、二院制の恐ろしさである。民主党は第45回衆議院総選挙で308議席の圧倒的多数を獲得した。しかし、参議院での議席数が過半数に満たないため、社民党および国民新党と連立を組み、政権運営にあたることになった。
 この結果起きたのが、国民新党の政権内における台頭である。民主党所属大臣が思うように動けていない一方で、国民新党の亀井静香氏は政策合意を盾にやりたい放題。総選挙で党代表が落選し、明らかに国民の信を得なかったと思われる政党の現代表が、である。

 民主党議員が政権の回し方を心得ていないため、掣肘することができないという問題があるのかもしれないが、やはり最大の問題は、参議院の存在である様な気がしてならない。長期的視野にたって政治を考えるという建前は良いが、変革期には意思決定のスピードを落とすだけの存在にしかなっていないように思える。
 とはいえ、即、参議院廃止の流れに傾くことはあり得ないので、現実的な対処法を検討せねばなるまい。つまり、来年の参議院選挙で、どのような選挙結果を目指すのか、である。
 ひとつの方法としては、民主党が単独過半数を取るのを目指す、というやり方もあるかも知れないが、現状を見るとそれは危険な香りがいっぱいなので除外する。むしろ、今の教訓を生かし、まともに見える少数政党を政権内に入れる方向で検討したい。つまり、みんなの党である。(ちなみに今回の総選挙でボクが投票したのはココ。)

 次回の改選数は民主系54議席、自民系48議席、公明党11議席、共産党4議席、社民系3議席、その他1議席。非改選数は民主系66議席、自民系37議席、公明党10議席、共産党3議席、社民系2議席、その他3議席。
 みんなの党がキャスティングボードを握るには、現政権を過半数割れさせることが前提。与党の非改選数は68議席で、改選数は57議席だから、これを達成するには、野党を現状維持にして、みんなの党が5議席獲得できれば良いわけだ。現政権が失点を重ねれば、なんかいけそうな気がする。

 というわけで、次の選挙ではこの目標の実現を目指します。

2009年の政治・経済

クロノ×セクス×コンプレックス (1)(著:壁井ユカコ)

少年がのぞく少女の世界

 三村朔太郎は中学校卒業式の日、教室で幼なじみの小町梅に心無い言葉をぶつけてしまう。後悔冷めやらぬ高校入学式の朝、奇妙な路地で少女とぶつかった三村は、体が入れ替わっていて、その少女ミムラ・S・オールドマンとして、時間を操る魔法を学ぶ学校に入学することになる。状況の認識も追いつかぬまま、ミムラと同率首席のお嬢様オリンピアと、監督生の座を争うことになり…というお話。
 男子学生もいる学校なんだけれど、登場するのは女子学生ばかりで、まるで女子高に迷い込んだような雰囲気。(迷い込んだことはないけれど)未知の世界で冒険に挑む少女(少年?)を描いたジュブナイル小説という感じで、暗い雰囲気はほとんどない。
 普通の世界と魔法の世界、それぞれがどのように関わってくるのか、本物のミムラはどうなっているのかなど、純粋にワクワクしながら楽しめる作品だと思う。

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